国際医療福祉大(大田原市北金丸)はスポーツを軸に、住民の健康と交流を育むコミュニティーづくりを進めている。高齢化や過疎化で、体を動かす機会や世代間交流が減ることは多くの地域に共通する課題である。大学や地元の資源を生かした事業で、持続可能で先駆的な地域振興モデルとしたい。

 一般社団法人大学スポーツ協会(東京都)に採択された事業として9月から来年1月に取り組み、県北地域の全世代を対象とする。事業で言うスポーツは日常で体を動かすことも含め、参加のハードルを上げないことが特徴だ。

 事業の提案者で実務リーダーの井川達也(いがわたつや)理学療法学科講師(39)らによると、県民がスポーツに取り組む比率はおおむね全国平均を下回る一方、5人に1人が、生活習慣病リスクが高いメタボリック症候群とされ、運動による介入の余地は大きい。介護予防でも、他の活動と比べてスポーツの効果は際立つと言われる。スポーツを事業の軸に据えるゆえんである。

 事業の柱は、地域スポーツ教室、スポーツプログラムに触れにくい遠隔地向けデジタル発信、フェス、指導者の育成の四つだ。

 矢板市内で10月に開いたフェスで、大学の理学療法士らが各来場者に合った運動を助言。状態を数値化するなどし、自発的に体を動かす動機への気づきを促す方策である。来年1月、大田原市内でもフェスを予定している。参加者にとって、運動習慣を見直す機会になるだろう。

 4本柱はぞれぞれ具体的な目的があり、相乗効果を期待したい。

 事業期間は限られ、住民の活動をどう継続するかは課題だ。フェスは来場者同士の交流を生むことも狙うが、さらにつながりを広げ、維持することが不可欠だ。

 二つの地元総合型地域スポーツクラブが、事業に協力している。事業をきっかけに始まった住民の動きを、クラブの継続的な活動に乗せることは有効な手だてではないか。井川講師は「具体的にどのような方策が効果的かを模索している」と話す。

 理学療法学科、作業療法学科など多様な学科を持つ大学の存在は貴重である。モデルづくりを見据え、大学、クラブ、連携する自治体も合わせ、人材、知見、設備を最大限に活用することが鍵だろう。