道交法が義務付けた6歳未満のチャイルドシートの使用率は、2024年の県内が76・7%と全国平均(78・2%)を下回り、2割超が不適正使用か未使用だった。福岡市で8月に起きた事故では、チャイルドシートが使われなかった幼い姉妹が死亡するなど子どもの死やけがにつながる可能性が高い。

 チャイルドシートの推奨基準の見直しを進めてきた日本自動車連盟(JAF)は今秋、「身長140センチ未満」としていた基準を「150センチ未満」に引き上げた。子どもの安全確保を最優先した法令順守とともに、体格に合わせた適正な使用を徹底させたい。

 JAFと警察庁による24年の県内調査によると、不使用だった23・3%の内訳はチャイルドシートに座っていたがベルトを着けていなかったのが最多の11・4%。座席で大人用シートベルト着用が6・4%、保護者が抱っこしていた事例も1件あった。

 チャイルドシートは00年の道交法改正により、6歳未満の乳幼児への使用が義務化された。しかし成長は子どもによって異なり、同じ年齢でも体格に個人差が出るのが一般的だ。6歳以上でも150センチ未満の子どもがシートベルトのみを使った場合、首にベルトがかかる恐れがあるとされる。

 22年度の学校保健統計調査によると、11歳の平均身長は男児が146・1センチ、女児が147・9センチである。JAFの推奨基準に合わせると、小学校高学年の多くがチャイルドシート装着の対象になる。国の身長調査が平均値であることを考慮すると、対象児童はさらに増えることになる。

 福岡市の事故で死亡した5歳と7歳の姉妹は、いずれも身長140センチ未満だったとされ、シートベルトで腹部を圧迫されたことに伴う出血性ショック死だったとされる。将来ある子どもの死をこれ以上、増やしてはならない。

 国は適正使用の啓発に努めるとともに、現行の道交法が定める年齢に限らず、身長も義務規定にすることを検討すべきだ。他国では身長も基準としている例は多い。

 チャイルドシートは乳児用、幼児用に限らず、学童用も販売されている。特に複数の子どもを育てる保護者の負担は大きい。県内では鹿沼市が購入費の一部を助成している。子どもの命を守る取り組みを本県でも加速させたい。