3年ぶりとなる衆院選が15日、公示された。石破茂(いしばしげる)首相の下で自民、公明両党が政権を維持できるかどうかが焦点となる。

 政治とカネを巡る問題を受け、国民の政治不信はかつてなく深刻化している。自公政権は信頼に値するかどうか、27日の投開票に向けて、有権者は自らの基準で審判を下すことになる。

 県内では五つの小選挙区で前回、比例代表での復活を含めて自民の5人、立憲民主党の2人が当選した。今回はこの7人を含む16人が立候補する。

 自民派閥裏金事件などに関し、石破首相は4日の所信表明演説で「政治への信頼を取り戻し、納得と共感をいただく」と述べた。だが国会での論戦は、衆参両院での代表質問と党首討論にとどまり、十分な判断材料を示すには至っていない。自民は選挙戦を通して、説明責任を果たすことが求められよう。

 中でも3区の簗和生(やなかずお)氏は党から処分を受け、公認は得たが比例代表への重複立候補は認められなかった。報道各社の取材に対し、簗氏は文書によるコメントで自ら潔白であることを繰り返し主張しているが、地元では「有権者に向けた情報発信をしていない」と苦言が漏れるなど、一般市民に浸透しているとは言いがたい。

 3区では立民新人の伊賀央(いがひろし)氏と、自民党籍を持つ無所属新人渡辺真太朗(わたなべしんたろう)氏の2人が迎え撃つ。簗氏がどのように説明を尽くすのか、有権者は注視しなければならない。

 そもそも政治不信は裏金問題にとどまらず、旧統一教会問題や「桜を見る会」など、2012年に自民が政権を奪還してから高まってきた。「1強」の下で、おごりや緩みはなかったか。簗氏以外の自民候補者も、政治不信を払拭(ふっしょく)する姿勢を示す必要がある。

 一方、野党は政権批判の受け皿として、有権者の信頼を得られるかどうかが問われる。今回、野党間の候補者調整は間に合わず、県内は1、4、5区で反自民票が分散する可能性がある。立民が比例復活を含め前回獲得した2議席を守れるかは、支持拡大を図れるかどうかによる。

 政治改革が必要なことは言うまでもないが、物価高を踏まえた経済対策や東京一極集中の是正、選択的夫婦別姓など、政策課題は山積している。3年間の岸田文雄(きしだふみお)政権下で行われてきた安全保障政策の転換、防衛費の増大、原子力政策などに対する審判も忘れてはならない。

 今回から、本県の小選挙区の区割りが一部変更となる。栃木市は2区だった旧西方町と、4区だった旧大平・藤岡・都賀・岩舟町を含め、市内全域が5区に統一される。下野市は1区だった旧南河内町を含め、市内全域が4区に統一される。

 選挙区が変わっても、貴重な一票を放棄することのないよう、それぞれの候補者と向き合い、判断してほしい。

 本県小選挙区の衆院選の投票率は自公政権が復活した12年以降、50%台前半にとどまっている。その間、誕生した政権の下で政治不信は高まった。有権者から関心を持たれない政権に、緊張感はなくなる。政治不信だからと投票を棄権するのではなく、一票を投じて政権に緊張感を与えるのも有権者の役割だろう。