法蔵寺の本堂内に増設された永代供養堂。特製のケースに遺骨を納めている=7月中旬、日光市大桑町

法蔵寺境内に整備された樹木葬の区画。半数近くが埋まっている=7月中旬、日光市大桑町

法蔵寺の本堂内に増設された永代供養堂。特製のケースに遺骨を納めている=7月中旬、日光市大桑町 法蔵寺境内に整備された樹木葬の区画。半数近くが埋まっている=7月中旬、日光市大桑町

 地縁や血縁が薄れ、少子高齢化が進む中、墓への考え方が変化している。栃木県内でも合葬墓(がっそうぼ)需要が高まり、墓石を撤去し敷地を返却する「墓じまい」も増えている。室内に遺骨を納める納骨堂や自然葬を選択するなど弔い方は多様化している。

 「寺との関係や墓を維持するプレッシャーがあった」。宇都宮市、会社員女性(34)は父親を亡くしたのをきっかけに6月下旬、墓じまいをした。疎遠になっていた親族に連絡し、同意を得て手続きを進めた。「肩の荷が下りた。改めて父親と向き合う機会にもなった」

 宇都宮市徳次郎町の石材店「石太郎」では、墓じまいの依頼が増えている。最近は年30~40件あり、10年前の倍以上だ。「子どもに迷惑をかけたくない」などの理由が多いという。青木克浩(あおきかつひろ)社長(63)は「新しくお墓を建てる人は本当に減った。今はお墓の維持を負担に思う人も多いのでしょう」。

 日光市足尾町掛水の呑龍(どんりゅう)寺は約10年前に永代供養の合祀(ごうし)墓を整備。墓じまいだけでなく、墓を持たない人からの納骨の依頼も増えている。町の過疎化が続く中、佐々木正直(ささきしょうじき)住職(76)は「墓じまいできればまだいい方。足尾の3分の1のお墓は墓参りもなく放置状態なのでは」と話す。

 従来の弔い方にとらわれず、さまざまな供養の形を取り入れる動きが広まっている。

 同市大桑町の法蔵寺は約1年前、境内に樹木葬の区画を整備。ヒノキやスギが周囲に植えられ、小さな墓が約100基並ぶ。既に半数近くが埋まっているという。お経の声が届く本堂内に設けた永代供養堂も需要が高く、昨年増設した。樹木葬や永代供養堂は最初に料金を払えば追加の費用はなく、寺が掃除も含め永代供養する。長田真宏(おさだまさひろ)住職(51)は「通常の墓より費用が抑えられるのも人気の理由なのでは」と話す。

 宇都宮市西原1丁目の光琳(こうりん)寺では、子どもに負担をかけない一代限りの「夫婦墓」などがある。納骨後は一定期間供養し、その後は合葬式の永代供養墓に移される。井上広法(いのうえこうぼう)住職(44)は「時代によって弔いに対する考え方は変わる。寺はそうした価値観に寄り添い、新しい供養の形を提案していく必要がある」と話している。