荼毘に付された女性の骨箱と位牌。三松会の車にそっと置かれた=9日午後、群馬県館林市(写真は一部加工しています)

三松会の式場で執り行われた葬儀=9日午後、群馬県館林市

荼毘に付された女性の骨箱と位牌。三松会の車にそっと置かれた=9日午後、群馬県館林市(写真は一部加工しています) 三松会の式場で執り行われた葬儀=9日午後、群馬県館林市

 引き取り手のない「無縁遺骨」が全国的に増える中、NPO法人「三松会(さんしょうかい)」(群馬県館林市、理事長・塚田一晃つかだいっこう)源清寺住職)は栃木県など複数自治体の依頼を受け、供養の活動を続けている。約30年にわたる活動を支えるのは、身寄りのない人たちの「最後のとりで」になりたいというスタッフの強い思いだ。供養の現場に立ち会った。

 9日午前11時過ぎ、県央の警察署に同法人の白いワゴン車が到着した。姿を見せたのは僧侶の竹田勝映(たけだしょうえい)さん(58)らスタッフ3人。6月中旬に亡くなった県央在住の女性(59)の遺体を引き取りに来た。

 近所の人によると、女性は2年前に父親を亡くしてから独り暮らしだった。体調が優れず、自宅に閉じこもりがちで、地域付き合いも薄かった。食品の配送業者が異変に気づいて警察に連絡し、死亡が確認された。死因は不詳という。

 行政などが遠方の親戚に連絡を取ったが、引き取ってはもらえなかった。警察署の安置所で保管されていた遺体は同法人が持参した白いひつぎに納められた。

 白装束や帯、足袋などを添え、竹田さんが短くお経を唱え、「旅支度」を整えた。「いろいろな事情があるのでしょうけどね…」。女性の身の上を思いながら、しんみりとした表情を浮かべた。

 正午過ぎ、県南の斎場に着くと、ひつぎを丁寧に降ろし火葬炉へ移した。スタッフが手を合わせる中、読経の声が響く。外は小雨が降り始めていた。

 約1時間半後、火葬終了を知らせるアナウンスが流れた。数十人が参列していた葬儀を横目に、スタッフの一人が骨箱と位牌(いはい)を両手に抱え、駐車場に止めた車の助手席にそっと置いた。

 館林市の源清寺に隣接する式場では、色とりどりの花が添えられた祭壇が用意されていた。葬儀は約30分。祭壇に遺影はなく、読経では唯一分かる名前と死亡日のみが読み上げられた。スタッフ4人が焼香して手厚く弔った。

 骨箱は線香の煙が漂う本堂内の納骨堂の一角に。周囲には身寄りのない人の骨箱が所狭しと並ぶ。遺骨は秋の彼岸前に他の遺骨と共に一人一人戒名を授け、5800柱以上を数える共同墓地に埋葬される。

 県内の公営墓地などで2023年度に保管した無縁遺骨は約300柱。10年前の3倍となり、今後も増える見込みだ。

 同法人には年間300件程度の依頼がある。親族が弔う時代は薄れつつあるのか。塚田理事長(58)は「身寄りのない人はいないのだが…。私たちはどんな方でも見送りたい」。行き場のない無縁遺骨に寄り添っている。