摂取していた紅こうじ入りサプリメントを手にする福岡県福津市の女性=4月上旬(提供写真)

 小林製薬(大阪市)の「紅こうじ」成分入りサプリメントの健康被害。西日本新聞「あなたの特命取材班」が呼びかけて寄せられた情報を基に取材した。問題となった「紅麹(べにこうじ)コレステヘルプ」を摂取した人たちは、自らの体調への不安を口をそろえて訴える。識者は「一人で悩まずに済む支援が必要だ」と提言する。

 「軽い気持ちで飲んだのがうかつだった」。福岡県福津市の40代女性は、取材に後悔の念を語った。

 きっかけは2022年始め。定期健診で悪玉コレステロールの数値が高く、インターネットで改善方法を調べ、コレステロール低減を効能に掲げたサプリがあることを知った。同年夏、ドラッグストアで紅麹コレステヘルプを見つけ、購入を始めた。

 一度に3粒、2日に1回のペースで飲み続け、健診が近くなると毎日、摂取した。コレステロールに改善は見られず、23年12月に飲むのをやめた。

会社対応に疑問

 一方で、摂取し始めた後の健診で、尿検査に異常が見つかった。小林製薬は今年3月、腎疾患などの報告を公表。死亡例が報じられ、家族が関連を心配した。同社の窓口に連絡すると、商品は回収し、初回の診察費用は負担するとの説明を受けた。「もし症状がサプリのせいなら、受診は1回で終わらないのに」と対応に疑問を感じた。

 4月上旬に病院を受診。今のところ「サプリと異常の関連性は低い」との診断だった。ほっとしたが、まだ一部の検査は結果が出ていない。「入手の手軽さもあって買ったのに。健康のために飲んだサプリで、こんな心配をするとは考えもしなかった」と話した。

 大阪府寝屋川市のパイロットの男性(75)も紅麹コレステヘルプを昨年12月まで1年間、常用。目的は悪玉コレステロールの改善で、処方薬を併用したためサプリの効果か分からないが、数値は良くなった。

 今、特段の体調悪化はない。でも不安だ。サプリが回収の対象となり、同社の相談窓口に100回以上電話をしたが、話し中でつながらずかけるのをやめた。

 紅麹コレステヘルプは「機能性表示食品」の届け出がある。男性は他にもさまざまな機能性表示食品を試してきた。「薬じゃないのは分かっていたが、国はもう少し安全性をチェックできなかったのか」と制度への不信をあらわにした。

調査と救済並行

 被害の原因特定は長期化も予想される。食品公害に詳しい長崎大の友澤悠季准教授(環境社会学)は「摂取した当事者は『どうしてそんな物を食べたんだ』と周囲に責められ、理解されない可能性がある」と懸念。行政などに対し「原因特定を待っていては救済にならない。原因調査と救済を同時並行で進め、証拠や因果関係によらず症状や困り事に耳を傾け、支援することが重要だ」と求めた。(西日本新聞)

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