シールが残り、ラインから外された食品容器(画像の一部を修整しています)

工場でシールを剥がした後の食品容器を手に取る藤井マネージャー

シールが残り、ラインから外された食品容器(画像の一部を修整しています) 工場でシールを剥がした後の食品容器を手に取る藤井マネージャー

 「スーパーで回収されている透明な食品容器のシールは剥がさなくていいの?」。広島市安佐北区の女性(57)が中国新聞編集局へ声を寄せた。シールを付けたまま回収ボックスに入れている人を見ると、もやもやすると言う。「爪が欠けるほど頑張ってシールを剥がす」という女性の努力は報われているのか。食品容器のリサイクルの現場を訪ねてみた。

 帰宅途中にいつも寄るスーパーで、回収ボックスの注意書きを改めてよく読んだ。「洗って乾かしてお持ちください」とはある。特にシールには触れられていない。

 リサイクルを手がける広島県福山市の食品容器製造のエフピコを訪ね、女性の疑問をぶつけてみた。サステナビリティ推進室の藤井宣裕マネージャーは「剥がしてもらい、ありがたいです」とうれしそうに感謝を口にした。

選別の妨げに

 多少の剥がし残しなら、工場で容器を洗浄したり、溶かしたりする工程で取り除けるそうだ。一方で、全面にシールが貼られていると機械が容器の素材を選別する際に妨げになり、他にも紙以外のシールは除去しにくい。これらの容器は手作業でラインから外し、他社に引き渡して固形燃料などになる。食品容器を循環させる水平リサイクルではないがエコにはなっているという。

 とはいえ、リサイクルされれば、原油から新しい容器を作るのに比べて二酸化炭素(CO2)排出量を約3割減らせる。きれいにシールを剥がす消費者が多いほど、CO2排出量も減ることになる。

 ただ、シール除去を厳格に求めると「それなら面倒だから、ごみとして捨てる」ともなりかねない。回収量が減っては本末転倒。というわけで、シールを剥がすように積極的には呼びかけてはいないという。

剥がしやすいと問題も

 それならば、と頭の中に解決策が浮かんだ。剥がしやすいシールを使えばいいのでは-。実際にラベルシールなどでは剥がしやすいタイプの商品が売られている。

 スーパーのフレスタホールディングス(安佐南区)に持ちかけると、応対した渡辺裕治執行役員は複雑な表情を浮かべた。剥がしにくいのには実は理由があるという。シールの内容にはアレルギー表示なども含まれ、「店頭で剥がされたり貼り替えられたりすると消費者の安全や命に関わる」。だから、あえて接着力の強いシールを使っているのだそうだ。

 エフピコの工場でラインを眺めていると、シールを必死に剥がしたような跡がある容器もたくさん流れていた。同社のリサイクルで節約できた原油はこの33年間で約13億478万リットル。一人一人の積み重ねが大きな効果につながっている。

 リサイクルする側はこう呼びかける。「できる範囲で協力してください」。取材した上で聞くと、重い言葉だと感じる。おろそかにしないように、肝にぴったりと貼り付けておきたい。(中国新聞)

◇中国新聞のサイトはこちら