【栃木】市出身の日本画家田中一村(たなかいっそん)(1908~77年)の顕彰団体「田中一村記念会」はこのほど、一村の業績をまとめた冊子の第3集「栃木県内で見られる一村(米邨(べいそん))作品」を発行した。未公開作品も含め、県内に存在する44点を掲載した。13日にはとちぎ岩下の新生姜(しょうが)ホールで、大木洋三(おおきひろみつ)会長(79)が記念講演会を開く。
一村は5歳まで市内で過ごし、上京した。50歳で奄美大島に渡り「アダンの海辺」などの名作を残した。同会はこれまで、一村の出生地や小中学生時代をまとめた冊子を発行している。
第3集の調査では、大木会長らが県内の美術館や個人宅に足を運び、47点の作品を確認した。うち44点の写真や背景を年代順に紹介。ボタンと水仙を描いた「貴寿無極図(きじゅむきょくず)」など未公開作品も掲載したという。
県内に多くの作品が残っているのは、佐野市の料亭「丹波屋」が頒布会を開催し、親戚や得意先が購入したためと考察。東京で米邨を名乗っていた頃で、南画形式が多い。調査では幼少期や奄美大島時代の作品は見つからなかった一方、贋作(がんさく)が複数確認されたという。
大木会長は「地元ならではのまとめ方で、県内の作品をほぼ網羅できた。今後の研究の基礎資料としてほしい」と話している。
冊子はA4判45ページ。希望者に配布する。記念講演会は午後3時から。無料。
(問)同会事務局0282・22・5274。