「働き方改革」が注目される以前、零細事業所の経営者からこんな話を聞いたことがある。

 従業員は女性パートが主力。子育て世代の女性は時間に追われ、定時に仕事を終わらせたい。仕事と家庭の両立に懸命な女性たちは、自主的に効率化を考え、実践した。助け合いも生まれた。「終わらなければ残業」という考え方はなくなり、女性の創意が職場を変えたという。

 2021年の出生動向基本調査で、女性の結婚・出産への意欲低下が顕著になった。価値観の多様化がうかがえる一方、女性に偏りがちな家事・育児の負担や、男性と比べて低い賃金水準などのジェンダーギャップへの失望との指摘もある。

 毎日新聞社の政治部長を務めた佐藤千矢子(さとうちやこ)さんの著書「オッサンの壁」(講談社現代新書)。政界などの取材で男性社会の壁に直面し続けてきた著者は、こう記述する。

 「女性の生きづらさは、男性の問題でもある」。旧来の価値観や慣行が社会変革の阻害とならないよう男性にも壁を壊す役目があるのではないだろうか。