友人同士や同僚間などで呼び合う愛称には、相手との距離を縮める良さがある。改めて「こう呼んでもいいか」と相手の許可を取ったことはほとんどないが、合意を得られたつもりで使っている。
そんなことを思ったのは、先日、ネーミングライツ(命名権)を巡る反対運動をリポートした原稿にデスクとして目を通したからだ。那須塩原市が公園の命名権を公募したところ、近隣住民が「正式名称で親しまれてきた公園に愛称はふさわしくない」と反対署名を寄せたという。
公共施設の愛称として企業名などを冠するネーミングライツ事業。自治体の財源確保と企業の地域貢献PRを両立する妙案なのだろうと理解していたが、そう単純なものではなかった。
記事に登場した専門家によると、国内では600以上の施設で導入されており、同様の反対運動は各地で起きている。正式名称の変更と比べるとネーミングライツの手続きは簡便だが、だからこそ「丁寧な合意形成が必要」と指摘する。愛称が愛称たりうるのは、広く受け入れられてこそだ。