投稿者の自宅のスレートぶき屋根。石綿が含まれていることが分かった=福井県内

 粉じんを吸い込むと、肺がんなどを引き起こす恐れがあるアスベスト(石綿)。現在は新たな使用が禁止されているが、2006年以前に建てられた住宅は屋根や外壁などに含まれている場合があり、解体・改修で除去する際に周囲に飛散させない対策が必要になる。昨年の法改正で石綿を使った全ての建物が規制対象となり、リフォームや解体を考えている人は思わぬ経済的負担に直面する可能性がある。

 福井新聞の調査報道「ふくい特報班」(通称・ふく特)に、自宅の改修を検討している女性からメッセージが寄せられた。自宅は築20年超の鉄骨住宅。薄い板状のスレートぶき屋根の改修を業者に相談したところ、石綿が含まれていると分かった。除去にはかなり費用がかかると告げられ、「寝耳に水。建てた当時は既に社会問題になっていたので、使われているとは思っていなかった」と憤る。

法改正で対策必要に

 石綿の大半は建材に使用されていた。県環境政策課によると、1995年に含有率1%超の吹き付け作業が原則禁止となり、2004年に含有率1%超の主な建材などの製造が禁止された。06年には同0.1%超の製品の製造や使用が禁止となった。投稿者の自宅は04年以前に建てられた。

 石綿が含まれる建材は、飛散性の高い順にレベル1~3に分類される。昨年4月に施行された改正大気汚染防止法では、従来のレベル1~2の建材に加え、石綿を含む成形板(レベル3)も解体・改修時の飛散防止対策が義務化された。環境省は、法改正によって対策が必要となる解体・改修工事数は5~20倍になるとみている。

 県内の調査・分析会社によると、06年以前に建てられた一般的な鉄骨や木造の住宅では、屋根や外壁、軒天にレベル3の建材が使われている可能性がある。

 除去費用について県内のある施工業者に聞くと、レベル3の建材の場合、レベル1、2のような厳重な対策はしなくていいが、切断・破砕をせずに取り外し、特別な方法での処分が必要になる。費用の相場は1平方メートル当たり数千円という。

補助制度追い付かず

 国は除去工事の補助制度を設けているが、レベル1の石綿が含まれている建物だけが対象。県内で補助制度を設けている自治体はない。国は労働者や住民の健康を守るために規制を強めてきたが、支援制度が追い付いていないのが現状だ。「除去費用は発注者が負担しなければいけない。国も使用を認めていたのに…」と投稿者は嘆く。

 投稿者の自宅は除去に数十万円かかるとみられ、改修に踏み切れないでいる。「今、リフォームしなくてもいずれは必要になる。子や孫が負担するなら今できるだけのことはしてあげたいのだけど…」と複雑な心境を語った。

 【ズーム】アスベスト(石綿) 極細繊維からなる天然鉱物。耐久性や耐熱性などに優れ安価に仕入れることができたため、建材に広く使われた。しかし、粉じんを吸い込むと肺がんや、胸や腹の臓器を覆う胸膜や腹膜にある中皮細胞のがん「中皮腫」の原因になることが分かり段階的に規制が進んだ。

(福井新聞)