幼少から難病と向き合いながら生活してきた高校生柔道選手がいる。栃木県白鴎大足利高3年の内藤智(ないとうとも)さん(17)は10歳の頃に1型糖尿病と診断された。生きるために自己注射など血糖管理を欠かせない日々を過ごしながらも「病気を言い訳にしない」と決め、文武両道で稽古に打ち込んでいる。「大学でも柔道を続けて、活躍することで病気の人に勇気を与えたい」と今日も畳に立つ。14日は世界糖尿病デー。
内藤さんは父が日本人、母が米国人。柔道一家で、自身も5歳で柔道を始めた。小学5年の時、夜間に行くトイレの回数が多いことが気になった。病院に行くと「1型糖尿病」と告げられた。糖尿病は「太っている大人がなるイメージだった」ため、「なぜ自分が」と当時は理解できなかった。
生活習慣病に起因する2型糖尿病と違い、1型は原因が分かっていない。膵臓(すいぞう)のインスリン分泌機能が失われることによって起き、小児期に発症するケースが多い。患者は国内に10~14万人いると推定されている。
低血糖状態になると体に力が入らなかったり、高血糖になり過ぎるとだるくなったりするという。食事のたびに自らの手でインスリン注射を打ったり、体調に異変があればその都度指先に針を刺して血糖値を計ったり。「最初は痛くてつらかった」
周囲との違いは食生活も。糖に分解される米などを避け、肉や野菜が中心の毎日を送ってきた。
一方で学校生活は、病気の公表にいじめや偏見の不安がつきまとう。だが周囲には積極的に病気のことを伝えるようにしてきた。高校入学当初は教室での注射が認められなかったが、両親が熱心に学校に説明し、今ではいつでも注射が打てる環境になった。父は試合や遠征時の送迎なども欠かさず「両親の支えも本当に大きい」と感謝する。
1型は血糖管理を徹底すれば、糖尿病でない人と同じように生活できる。プロ野球選手になった人もいれば、プロ自転車選手もいる。4年前の自転車ジャパンカップでは患者のライダーと交流し「どんな病気があっても、頑張れば世界で戦える。病気はスポーツに関係ない」と思いを強くした。
一生付き合っていかなければならない病と向き合いつつ「誤解や偏見がないように、周囲に知ってもらって社会の理解が広まってくれたら」と願う。来春には平成国際大へ進学予定。「刑務官になって社会に貢献したい」という夢に向かって日々稽古に励んでいる。