第22回全国障害者スポーツ大会「いちご一会とちぎ大会」(障スポ)が、29日に開幕する。台風やコロナ禍による延期、中止を経て4年ぶりの開催となる障スポには、多様な背景のある本県選手が出場する。積み重ねた努力や大舞台に懸ける意気込みを伝える。
42年前の悔しさを晴らす大舞台を迎える。監督など指導者の立場で、ではない。再び現役の選手として。
視覚障害者の野球「グランドソフトボール」県代表の山川典利(やまかわみちとし)(65)=壬生町。県勢298人の中で唯一、障スポ前身の全国身体障害者スポーツ大会「栃の葉大会」へ出場した。
準決勝の徳島戦。同点の最終回2死で全盲打者に適時内野安打を許し、2-3で敗れた。外野にいて「風が強く、枯れ葉がガサガサして聞こえにくかった」のを覚えている。音は要だ。
1チーム10人で戦う。捕手が手をたたく音を合図に投手がハンドボール大の球を転がし、音を頼りに打者はバットを振り、野手もボールをさばく。走塁と守備用ベースが分かれ、全盲の野手は、ゴロでも捕球できればアウトを取れるなど独自のルールが競技の魅力を高める。
先天性の全盲である山川は15歳のころ、競技に熱中する盲学校の先輩たちに憧れ仲間に入った。「バットの芯にボールが当たる気持ち良さ」に夢中になった。
障スポの県代表は20~70代の15人。直接は見えない「一番輝くメダル」を目指し、流れを呼び込む一打で勝利を引き寄せる。