事故や病気により脳が損傷され記憶力や注意力、感情のコントロールなどに障害が出る「高次脳機能障害」の当事者、家族らに対する支援法が施行された。これを機に医療、福祉や行政、教育関係者はもちろん、全ての市民の障害に対する理解を底上げし、当事者の社会参加を支えたい。
障害の原因は脳卒中や交通事故、労働災害などで、誰もが当事者になる可能性がある。2022年の国の調査による推計では当事者は全国に約23万人、人口に基づく県の推計では県内に約3500人いるとされる。五百数十人に1人の計算だ。
だが障害への理解は、さまざまな場面で十分とは言えない。診断ができる医療機関は県内に30カ所程度。社会参加や復学を目指しても受け入れる側から「前例がない」と断られ、障害の症状なのに「やる気がない」「わがままだ」などと誤解され精神的な2次障害に追い込まれる場合さえあるという。
県や市町はこれまで以上に理解を促す啓発活動に注力してほしい。支援法は国民にも障害の理解、社会参加への協力を努力義務として求めている。学校や自治会など、あらゆる機会を通じて地域社会全体に理解を浸透させたい。
県内では08年に当事者、家族らのとちぎ高次脳機能障害友の会が発足し、県も市町などと支援の充実を図ってきた。現在は県障害者総合相談所と県立リハビリテーションセンターの2支援拠点機関と各地の5病院が担う地域支援拠点機関とが中心となり相談対応に当たる。このほか県が医療従事者や市町、福祉事業者の担当者ら向けに研修や講座を開いている。
医療機関や福祉事業者、市町は担当職員を積極的に受講させるべきだろう。受講者がそれぞれの現場でキーパーソンとなり、理解や支援の底上げを促せる。
高次脳機能障害は身体的な障害がないことなどから「見えない障害」とも言われ、社会的な支援からこぼれ落ちることが多かった。だが本来は、理解や支援を受けながら社会参加すること自体がリハビリになり得る。
友の会に加入している当事者家族は約40家族。県内でも障害に気づいてもらえず、支援が届いていない当事者は少なくないと想定される。障害を改めて理解し、潜在する当事者にも手を差し伸べたい。
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