東京都台東区の寺町、谷中は「猫の街」としても知られる。猫の姿を捉えた彫刻作品や、昭和の雰囲気が残る商店街近くのカフェでくつろぐ猫に出合い、街の人々の優しい気持ちに触れた。
JR日暮里駅を出て、緩やかな坂道を5分ほど歩くと、「東洋のロダン」とも称された近代日本彫刻の巨匠、朝倉文夫のアトリエ兼住居を公開する「朝倉彫塑館」が見えてくる。アトリエ棟に足を踏み入れると、窓から柔らかな光が差し込み、重厚なブロンズ像を照らし出していた。
猫がネズミを捕らえる一瞬を表した作品「よく獲たり」に近づく。朝倉は愛猫家で多いときは19匹も飼っていたという。学芸員の戸張泰子さんは「かわいいだけでなくどう猛な面まで、ありのままを捉えており、朝倉の観察眼が発揮されている」と語る。中庭では時折コイがはねる水音が響き、存分に癒やされた。
館を後にし、谷中銀座商店街へ。夕日の名所として知られる階段「夕やけだんだん」を下ると、通りにずらりと店舗が並ぶ。猫のしっぽをモチーフにした焼きドーナツ店を見つけ、一番人気の「とら」を購入。ほおばると、ココアの素朴な甘みが口に広がった。
レトロな雰囲気の商店街を散策していると、総菜店の屋根に木彫りの猫が。猫グッズを扱う雑貨店「布風船」店主の女性は「昔に比べると猫を見かけなくなったけれど、猫好きなお客さんが海外からも訪れる」と笑顔だ。
商店街を離れて路地を進むと、保護猫とふれあえる「谷中宿木カフェ&レストラン」を発見。紅茶を注文し、悠々とお昼寝する様子を眺めて一息つく。店は保護猫シェルターを兼ねており、これまでに60匹以上を譲渡したという。
薄暗くなり、店を後に。「夕やけだんだん」を駆け上がって振り返ると、薄闇の中、商店街の明かりと家路を急ぐ人々の姿が浮かび上がった。
【ちなミニ】
朝倉彫塑館では4、5月と特別展会期中をのぞく毎月第3水曜、学芸員による作品解説がある。
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