芯の通ったスケールの大きい演奏を持ち味とするピアニストの五十嵐薫子が、「声」をテーマにプログラムを組む計3回のリサイタルシリーズ「彼方からの声と、応える声」をスタートさせる。7~9月に第1回を東京などで開催。「音楽を通して誰もが心の声を解放し、共有するような場にしたい」と話す。
「聴衆や演奏家、そして作曲家の内なる感情を湧き上がらせる演奏」を目指す五十嵐。3位に入賞した2022年のスイスのジュネーブ国際音楽コンクールでは参加者が執筆したプログラムノートも審査の対象で、その時も「声」をテーマに言葉をつづった。
第1回では、バッハなど作曲家4人の作品を取り上げる。特にムソルグスキーの「展覧会の絵」は、作曲家が亡くなった友人の遺作展を見た印象を表現していて、曲調はいくつもの「声」が秘められているかのように多彩だ。「悲しみながらも、友人の思いに応えたいというエネルギーがある。弾いていると自分が持っていなかった強さが引き出されるようです」
五十嵐にとってピアノは「一番うそがなく、すべてを受け入れてくれる」存在。「ピアノのことで落ち込んだり、怒ったりしたことをピアノを弾いて解消する」と笑う。
練習中はあらゆる感情が表現に直結し「こんなぬるいフォルテではだめだ!」と自分を叱咤激励することも。一方、集中力が高まる本番では、その時必要な表現をしっかり「出力」、時には聴衆全員と思いがつながるような感覚を抱くという。
シリーズ最終回に弾く曲は決めている。ベートーベンのピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラビーア」だ。「エベレストに例えられる最高峰の難曲。終楽章は複数の声部(パート)が主題を奏でるフーガで、1人でいろいろな声を同時に表現できるピアノの魅力が味わえると思います」
公演日程は7月26日東京・浜離宮朝日ホール、8月11日名古屋・電気文化会館ザ・コンサートホール、9月19日長野・サントミューゼ
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