「デジタル教科書」を紙と同様に正式な教科書にする改正学校教育法などが成立した。文部科学省は次期学習指導要領が小学校で全面実施される2030年度以降、小学校から導入する。

 これまで「紙の方が覚えられる」「デジタルの方が効率的だ」といった二項対立で議論が盛んになされてきた。だが、教科書は学びの「手段」であり、どちらか一方が正解という訳ではない。大切なのは、子どもたちの「学びの質」を最大化させるために、両者の特長をいかに活用するかという視点だ。

 現行制度では正式な教科書は紙が主だ。小中学校の英語や算数・数学などで使われているタブレット端末やパソコンは「代替教材」との位置づけで、これまでは国の検定の対象外だった。

 新制度では紙、完全デジタル、紙とデジタルを組み合わせた「ハイブリッド」の3タイプとなる。どれを選択するかは県内25市町の教育委員会などに委ねられるが、地域による教育格差を生んではならない。

 デジタルの最大の利点は、一人一人の子どもに合わせた「個別最適な学び」の実現にある。デジタルは文字サイズや色を変えられ、音声読み上げができるほか、動画で説明を視覚的に示すことができる。発達障害や聴覚障害の子にとって、「見てわかる」「繰り返し確認できる」は学びの大きな助けになるはずだ。

 だが、課題も少なくない。画面を長時間見続けることによる視力低下や集中力の欠如、何よりペンを持って紙に「書く」という身体的動作が減ることへの懸念は根強い。「深い思考」には紙が適しているという見方もあり、デジタルの万能視は危険だ。

 県教委教育政策課の担当者は「紙とデジタル双方のメリットを生かし、最も効率的な使い方を選択することが大切」と指摘する。「デジタルだけになるのではなく、選択肢が増えたと受け止めてほしい」とし、円滑な導入に向けて、各市町教委と協議を続ける方針という。

 教育効果を高めるためには、ICT(情報通信技術)を活用する教員の習熟度の引き上げも必要だろう。子どもたちが最も深く学べる環境は何か。現場には、その本質を見失わない冷静な選択と、最適解を探る不断の努力が求められている。