特別養護老人ホーム(特養)などを運営した佐野市の社会福祉法人「静山会」に、県が解散命令を出した。社会福祉法で自主的な経営が原則とされる社福法人に、最も重い行政命令が出されるのは異例だ。それぞれの法人はもちろん監督する行政も、サービスの劣化や経営のつまずきなどの予兆に目を光らせ、同じ事態を繰り返してはならない。
福祉サービスは本来、必要とする利用者が安心して安定的に使えるものであるはずだ。今回の命令は正当な事由なく1年以上事業を行わなかったのが理由で、利用者への直接的な影響はなかった。ただ2017年に経営難から突如、特養など四つの入所施設の閉鎖方針を明らかにした時は、入所者約100人が転居を余儀なくされた。県なども調整に奔走し乗り切ったが、そうした事態は言語道断だ。
経営の行き詰まりは、各方面に多大な影響を及ぼす。だからこそ社福法人には事業内容をはじめ評議員会や理事会といった体制、資産、会計などに厳しい要件が設けられている。貸借対照表や収支計算書、財産目録などは毎年度提出が義務付けられ、所轄庁の監査も3年ごとに行われる。
まずは全ての社福法人が、利用者にとって不可欠な事業を手がける当事者として健全経営を肝に銘じるべきだろう。その上で評議員会や内部監査など、自らのチェック体制を十分機能させることが必要だ。さらに、県などの所轄庁も、より丁寧な監査などに努めてほしい。問題の芽を小さいうちに摘めば、利用者への影響を回避する道も見つけられる。
県によると、静山会は施設を事実上閉鎖した後も理事長が交代しながら一貫して事業再開の意向があったという。とはいえ保管すべき理事会などの議事録もなく、22年には軽費老人ホームだった建物を必要な手続きを経ず売却するなどずさんな経営が続いていた。県は25年に改善勧告、改善命令を出したが、求めた是正はされなかった。今回の厳しい対応は当然だろう。
社福法人の経営を巡る不祥事は、ないわけではない。23年には愛知県で認可保育所を運営する法人の前理事長が、運営費約2億円超を着服していたことが明らかになった。
福祉で最も守られるべきはサービス利用者の利益だということを、社福法人も所轄庁も忘れないでほしい。
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