大田原市立図書館が先月、書架を設けた専用車両で市内を巡回する移動図書館事業を始めた。毎週水曜日に隔週で市内2ルート、各3拠点を巡る。開始から4回の運行で計73人が利用、13人が新たに図書館カードを作成した。同事業が市民の読書機会創出や地域コミュニティー醸成の一助になることを期待したい。

 移動図書館はへき地など図書館利用が困難な地域や場所を巡回し、図書館サービスを提供することが目的。専用車両を運行する自動車文庫の起源は1949年に千葉県立中央図書館が運行した「訪問図書館ひかり号」で、本県は50年7月、県立図書館の「あけぼの号」が県内4コースで運行を始めた(2000年に廃止)。自治体単位では現在、足利市など8市町が自動車文庫方式で運営し、鹿沼市など3市町が公民館などに本を持ち込み、貸し出しを行う巡回文庫方式で取り組んでいる。

 大田原市は指定管理者の図書館流通センターが提供する軽自動車ベースの「リブーン」を導入。収容冊数は約500冊と限られるが機動性が高く、絵本作家ヨシタケシンスケ氏のイラストがデザインされた車体が目を引く。

 定期ルートのほかスポット運行も行う予定で、8月の「おおたわら子どもフェスティバル」など複数の会場に出向くという。運行経費確保など課題はあるが、小山市や益子町などで実施している小学校や幼稚園・保育園への訪問、高齢者施設など需要に応じた柔軟な運行を目指してほしい。

 文化庁が2023年度に行った調査によると「以前より読書量が減っている」との回答は69・1%に上り、「1カ月に本を1冊も読まない」人は62・6%と08年比で16・5ポイント増加した。図書館の利用者減も全国的な傾向で、大田原市立図書館でも2015年の30万4010人がピークで、25年度は20万9497人と3割以上減少した。読書や図書館離れに歯止めを掛けるには、図書館側が積極的に「外に出て行く」姿勢を示す必要がある。

 昨年兵庫県などが運行した移動図書館「旅するキッカケ文庫」は、同県ゆかりの著名人50人が選んだ「人生が動き出すきっかけになった本」を搭載し話題を呼んだ。人々の琴線に触れる本をどのような形で届けるか。図書館を運営する自治体や指定管理者の取り組みに注目したい。