「クマが確認できたら早急に対応してほしいのに、京都府はなぜ目撃情報から1年もたって調査を始めるのか」。昨年度にツキノワグマの目撃が相次いだ京都府木津川市の男性が、京都新聞の双方向型報道「読者に応える」に、クマの生息調査を5月に始めた府の「鈍さ」に対して疑問を寄せた。全国でも市街地の出没・目撃が相次ぐ中、住民に不安が広がっている。(京都新聞)
男性は今年3月まで同市当尾地区の地域長を務めた植村浩司さん(68)。植村さんによると、昨年度は自転車で通学する中学生の保護者ら住民が不安の声を上げた。わなに誤ってクマがかかったとしても、府の計画上、駆除ではなく速やかに放獣しなければならず、当尾地区の各区長らも現行の対応に苦言を呈していたという。
「目撃」60件以上
不安の中で今年3月、植村さんは市によるクマ関連の説明会に出席。その中で府が生息調査の実施について説明し、協力を求めた。しかし府が木津川市をクマの生息域と認めても、被害を防ぐため府が計画的に捕獲、駆除するのは、調査を踏まえ特定鳥獣管理計画を改定した後の来年4月から。被害が差し迫れば市判断による緊急的な駆除もあり得るが、「1日も早くしっかり対応すべき」と納得できない植村さんは、会議を途中退席したという。
住民の不安・不満に対し、府農村振興課は昨年度の対応について「結果的に60件以上の情報があったものの、『クマらしきもの』とはっきりしない情報も多かった。本当にいるのか、どこから来たのか、科学的根拠が必要」と、調査実施がこの時期になったことに理解を求める。調査の結果、府北中部の個体群が南部に出没していれば、頭数管理の対象エリアを府南部に広げ必要に応じ計画的に駆除することになる。ただ、奈良県南部などの希少性が高い紀伊半島個体群が来ていた場合は、同県との調整が必要になるという。
全国のクマの出没・捕獲件数は昨年度、いずれも過去最多を記録。本年度は5月13日に木津川市で1件目撃があり、府北中部や京都市内の市街地付近などで目撃例が出ている。同課は「『被害があってからでは遅い』という住民の声も多い中、行政判断で計画の運用を前倒しすることもあり得る」とする。
共存のモデルを
一方、「捕獲は最後の対策」と位置づける日本熊森協会(兵庫県西宮市)の室谷悠子会長は「中山間地域の過疎や高齢化でクマが里周辺に住み着いている」と指摘。「クマを誘う栗や柿の除去や草刈り徹底などですみ分けられれば、クマも学習して出てこなくなる。行政には、共存へのモデルをつくって広げる役割を担ってほしい」と訴える。
長年、クマはいないとされた地域で暮らす植村さんの本音は、「調査するなら早くして、生息を否定してほしい」。不安が晴れる日を待ち望んでいる。

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