日光国立公園で、単なる観光情報にとどまらず自然、歴史と背後に広がる物語をまとめた「ストーリー集」作成が進んでいる。訪日客(インバウンド)を中心に公園の魅力をより深く伝えるのが狙いだが、観光関係者だけでなく広く地域住民にも浸透させ、地域が持つ資源の価値を高めたい。
環境省は自然公園で来訪者を増やし地域経済を活性化させ、環境保全の投資につなげる「保護と利用の好循環」を目指している。ストーリー集は国立公園の魅力、価値を来訪者に分かりやすく訴求する「インタープリテーション」の計画の一環だ。解釈や翻訳などを意味する英語で、体験や教育的視点を重視するガイドの技法として米国の国立公園などで取り入れられている。
日光国立公園では日光、那須、鬼怒川、塩原、甲子の5エリアでストーリー集を作った。本年度は高原山を抱える高原エリアを加え、公園全域の全体計画策定を目指す。
ストーリー集は作成して終わりではない。関係者が十分理解し共有することが必要だ。日光に限っても、来訪者の目的は文化財探訪、自然体験、温泉保養などさまざまだ。ストーリー集を共有することで、単独では対応できない来訪者のニーズをエリア全体で満たすことができるだろう。
既に日光エリアでは宿泊施設従業員、ガイドなどを対象に勉強会を開いているが、飲食業者や交通事業者などより幅広い関係者にも広げたい。さらには一般の住民が地域への理解を深める手引にもできないか。地元を理解することは郷土愛を育む。甲子エリアは「ふるさとを学ぶ『生きた教科書』に」とうたい、ストーリー集と合わせてかるたを作った。生涯学習講座などのテキストになるはずだ。
近年の観光は自然や文化財の背後にある歴史やストーリーを理解、体験できることが求められる。文化庁は文化財の持つストーリー性を重視し2015年、「日本遺産」を創設した。その目的は国立公園の取り組みにも通じる。県内は史跡足利学校の「近世日本の教育遺産群」など、4件の日本遺産がある。相互の情報交換も意義がありそうだ。
自然公園法は国民の「教化」を目的の一つに掲げる。来訪者にアピールするには、まず受け入れる側が自らの足元で価値を掘り起こし、理解を深めることだ。
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