1959年12月、帰国事業の第1陣として北朝鮮に向かう船=新潟港

 帰国事業で北朝鮮に渡った在日朝鮮人や家族らは、「地上の楽園」と宣伝された“祖国”でどう生きたのか―。当事者50人の貴重な記録を集めた「証言・北朝鮮帰国者」(集英社新書)が刊行された。関係者は「彼らが生きた証しを残したかった」と訴える。

 ジャーナリストや学者らでつくる「『北朝鮮帰国者』の記憶を記録する会」が編集。帰国後に脱北し、日本と韓国で暮らす50人に、計350時間以上のインタビューを実施、帰国前から脱北までの証言を時系列で収めた。

 北朝鮮到着時の回想では、劣悪な環境への衝撃が「パッと見た瞬間『やっ、しまった。ここまでひどいのか』とショックを受けました」(1961年)と語られる。食料にも事欠き、帰国時に持ち込んだり、日本の親族から届いたりした物資の有無が明暗を分けた苦難の生活。「帰国者10人のうち6人まで死んじゃったかな。病気で、飢えで」。90年代の大飢饉では、親族や友人を亡くしたという証言も相次いだ。

 同会では帰国者の手紙や写真のデジタルアーカイブ化や、書籍の韓国語版出版を目指している。