県が今春公表した在宅医療体制整備の進捗(しんちょく)状況などは、整備は徐々に進む半面、対応診療所といった医療資源の地域偏在がなお大きいことを浮き彫りにした。必要性の強まる医療と介護の連携は、現場から意識のずれを指摘する声も上がっている。
超高齢社会は進展している。望む人が住み慣れた場所で満足した人生を全うできるよう、県や市町は体制整備を強くリードしなければならない。医療機関、介護事業所など関係機関も合わせ、連携を深化させることが不可欠だ。
訪問診療の実施診療所・病院数など在宅分野の7項目の値は向上し、県は本年度目標値をおおむね達成した。ただ段階的な目標であり、これで充足したわけではない。
県内11在宅医療圏ごとの2023年度の数値では、65歳以上人口10万人に対する訪問診療の実施診療所・病院数が最多の栃木は67カ所、最少の鹿沼が31カ所で開きは大きい。しかも山間部は手が届きにくいなど地域的な事情もある。希望する患者が誰でも選べる状況ではない。
県や市町は地域の実情をつぶさに見極め、改善の方策を探る必要がある。本年度の診療報酬改定は在宅医療の質の向上を意図しており、それを踏まえることは必須だ。
25年の県調査では、訪問診療を行う病院は30%、診療所は23%にとどまる。人材や時間に余裕がないとの理由が多い。「かかりつけ患者だけは在宅でも診る」といった対応の余地はないだろうか。
医療と介護の連携が重要な場面は、入院からの在宅移行支援、日常の療養支援、急変時対応、看取(みと)りなどだ。
しかし県のヒアリングでは、高齢者施設から、退院後の入所の際「患者の評価について病院とずれることがある」との意見や、医療機関から「看取りを行うことになっている施設にもかかわらず、救急搬送が発生している」との指摘なども上がった。双方が機能を改めて確認し、県や市町は研修などの支援策で機能の充実を後押ししてほしい。地域内の連携会議などで意識や目線の統一を図りたい。
県は本年度、ACP(通称・人生会議)普及啓発のための予算を拡充した。ACPは本人や家族が人生最終章に望むケアなどを話し合い、共有する。その意思が明確になっていれば医療、介護の連携も取りやすくなるだろう。
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