県教委は本年度実施する公立小中学校の新規採用教員選考から、現在は普通免許状を持たない社会人も受験でき、合格すれば2030年4月の採用予定者とする特例を設ける。27年3月末までの10年間に企業などで通算5年の正規職員としての勤務経験があることが条件で、多様な人材の確保などが狙いだ。

 教育現場に豊富な社会人経験を還元できる仕組みの実現は歓迎したい。ただ質の確保のために学力試験は通常の新規採用試験内容と同様で、実際にどれだけ合格するのかは未知数だ。また新制度を実施する背景には教員のなり手不足がある。県教委にはその一因とされる長時間労働の抑制などの環境改善も同時に進める必要がある。

 本県公立学校教員の受験者数は17年度の2668人から26年度は1757人となり、10年間で3割以上減少した。要因には大学新卒人口の減少があるが、全国の小学校を35人学級とする制度が21年度に導入され、学級数が増え教員を奪い合う構図があるほか、長時間労働などの印象から学生に敬遠され、他業種と人材獲得を競わねばならない実態がある。こうした状況を受け県教委は、21年度に受験の年齢制限を45歳から59歳に拡大するなど教員確保へ盛んに策を講じている。

 教員免許を持たずに受験できる新たな制度は、24年9月から社会人向けに始めた「学校で働きたい人応援イベント」が契機となった。県北、県央、県南の3カ所で個別相談会や学校見学会などを実施し、教員免許を持たない社会人の一定のニーズを把握したという。同種の制度導入は他県でも広がりつつある。

 こうした門戸を広げる施策と同時に、働き方などの抜本的な改革も急務だ。長時間労働の要因の一つに挙げられる部活動について県教委は、全国的な動きに合わせ地域移行を進めている。25年度までに全公立中で休日部活動一つ以上の地域クラブ移行を目指し、9割の学校で実施されたという。だが福島県会津若松市のように常設部全てで完全移行したところもある。歩みを加速させ、近い将来の平日完全移行まで視野に入れたい。

 意欲ある多様な教員のいる教育現場はそのまま、子どもたちの利益に直結する。人間としての成長に直接関われる教員本来の魅力を広める努力を続けてほしい。