脳と脊髄の周囲は脳を包み込んで保護する「髄膜」で覆われ、脳脊髄液という液体が流れています。この髄膜に細菌が感染し炎症が起こることを細菌性髄膜炎といいます。髄膜炎菌性髄膜炎は、この細菌性髄膜炎の一つで、髄膜炎菌の感染によって起こります。
髄膜炎菌は健康な人の鼻や喉にも存在する菌(日本の保菌率は0・4~0・84%)ですが、感染者の咳(せき)やくしゃみなどの飛沫(ひまつ)感染や接触感染で伝播(でんぱ)します。こうして、髄膜炎菌が粘膜に定着した人の1%未満で、髄膜炎菌が粘膜を通して血流に入り、体の臓器に髄膜炎菌が到達して、侵襲性髄膜炎菌感染症を起こします。さらにこのようになった患者さんの半数程度で、菌が髄液に侵入して髄膜に炎症が起きる髄膜炎菌性髄膜炎を起こすのです。
髄膜炎菌性髄膜炎の潜伏期間は1~10日(主に4日以内)で、発症初期は風邪に似た発熱、頭痛、吐き気などの症状があります。しかし、症状の進行は極めて速く、意識障害やけいれんなどを来します。発症後13~20時間ごろには皮下出血や発疹が出たり、息が苦しくなったり、光を異常にまぶしく感じたりということが起こり始めます。
劇症型の場合は、1~2日で死に至ることもあります。致命率は19%と高く、回復しても四肢切断や難聴、言語障害、知能障害などの後遺症が残ってしまう場合もあるのです。
治療にはペニシリンGや第3世代セフェム系抗菌薬などが使われますが、初期症状が風邪症状に似ているため早期診断が難しく、治療が間に合わないこともあり、ワクチンで予防することが重要な病気です。
日本での侵襲性髄膜炎菌感染症の発生数は年間30~40人とまれですが、誰でも感染する可能性があります。好発年齢は15~19歳の思春期で、国内でも学生寮などでの集団感染が報告されています。このため、「学校の寮などで集団生活を送る者」に対して、ワクチン接種が推奨されています。侵襲性髄膜炎菌感染症ワクチンは任意接種で、医師と相談して接種します。
おかだ・はるえ 医学博士。専門は感染免疫学、公衆衛生学。テレビやラジオへの出演や執筆活動を通じて、感染症対策の情報を発信している。

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