医療の地域間格差是正を目指し、県は本年度からオンライン診療の普及に本腰を入れる。医師と患者間のオンライン診療に必要な情報通信機器を購入する市町や医療機関を対象として、購入費用を補助する。財源は全額国庫補助で賄う。
情報通信技術(ICT)を使って遠隔地と医師を結ぶ診療は、限られた医療資源を有効に使える手段の一つである。少子高齢化が進む中山間地での医療を充実させるため、今回の措置は重要な一歩である。
ただ、患者にはスマートフォンなどの扱いに不慣れな高齢者もいる。操作説明に時間を取られ、医師の負担がかえって増す懸念がある。安定した高速通信環境も必要だ。オンライン診療を円滑に進めるには、患者の事情を最優先にしなければならない。
県内にモデルとなる医療機関がある。大田原市の那須赤十字病院だ。昨年末から国と県のモデル事業を活用し、中山間地の公民館と病院、薬局をオンラインでつないで複数の患者の診療や服薬指導を行っている。公民館には病院から必要に応じて看護師を派遣し、現場でオンライン診療を補助する。
それまでは医師が巡回診療してきた。医師の移動時間がなくなることで医療資源の節約につながる。患者にとっても最寄りの公民館で必要な医療を受けられるメリットがある。県もまずは那須赤十字方式の普及を目指しているという。
最も簡素なオンライン診療は、医師側にパソコンとウェブカメラ、ヘッドホンとマイクが一体化したヘッドセット、患者側にタブレットがあれば実現する。
ただしタブレットの操作を患者任せにしては、円滑に進まないことは容易に想像できる。オンライン診療をただのビデオ通話としないためにも、最低でも看護師の同席とサポートは必要だろう。
長野県伊那市では、看護師が心電図や血圧計など必要な医療機器を積んだ「移動診療車」が患者宅の近くまで行き、車内と病院をオンラインで結んで診療している。患者は近くの公民館までも行かずに済む。
移動診療車は積載する医療機器にもよるが、1台当たり数千万円するとされる。本県も最終的にはこの医療水準を目指したい。
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