県立美術館の通路には、大きな銀色の壁があります。正面に立つと鏡のように自分が映ります。しかし、ただの鏡ではありません。その壁の前で体を動かすと、映った顔や体がグニャリとゆがんでしまいます。実は、この不思議な銀色の壁も大切な作品の一つなのです。

多田美波「周波数FL10-6874」(1968年、県立美術館蔵)
多田美波「周波数FL10-6874」(1968年、県立美術館蔵)

 この作品「周波数FL10-6874」は中央がへこんでいるため、映る物はゆがみます。これには作品と鑑賞する私たちの関係が曖昧になるように、という考えが込められています。作者の多田美波(ただみなみ)さんは美術館の空間に溶け合うような作品を作るため、このような仕掛けを施しました。