JR宇都宮駅西口の市街地再開発事業で建設中の複合ビルを巡り、防火部分に関する宇都宮市消防局の審査に誤りがあり、市が建築主の再開発組合に追加工事費約1億111万円を賠償することが3月、明らかになった。

 建物の品質や完成時期への影響はないとされるが、市の財政に損失を与え、市政への信頼を揺るがすミスである。市民の安全を守る行政の判断一つ一つが重い責任を伴うことを改めて肝に銘じ、再発防止に万全を期すべきだ。人事異動などで担当者が変わっても適切に審査できる体制を構築し、市民の信頼回復に努めなければならない。

 今回の誤りは、消防法施行令第8条に基づく「令8区画」の審査で生じた。開口部のない耐火構造の床や壁で囲まれた区画で、2時間以上の耐火性能などが求められる。

 原因として、令8区画に関する知識不足や審査体制の不備が指摘されている。消防局の担当者は2022年10月、設計者から区画壁の仕様に関する事前相談を受けた際、消防法令基準を誤って解釈し、本来適用できない仕様を適用可能と回答した。その後、建築確認申請で必要な「消防同意」の審査でも誤認が続き、上司4人も誤りを見抜けなかった。昨年7月、建設現場での消防局による中間検査で不適合が判明したという。

 令8区画の市内での確認申請は過去10年間でわずか3件にとどまり、今回の担当職員はいずれも令8区画を扱うのが初めてだった。それだけにより慎重な姿勢と、組織としての重層的なチェックが不可欠であった。市は消防局長ら5人を懲戒処分とし、市長も今月から給料を10%減額(3カ月)する。

 再発防止策として消防局は、事前相談や審査を複数人で対応する体制にし、令8区画用のチェックリストも作った。一定の前進と評価できるが、なお十分とはいえない。

 限られた人員や人事異動の中でも、法令や専門知識に精通した人材を計画的に育成し、知見を確実に継承する仕組みづくりが求められる。専門知識の体系的な蓄積、法令解釈の共有、経験や能力に応じた研修の充実など踏み込んだ対策を着実に進めてほしい。

 行政の判断ミスが社会に与える影響は大きい。市は責務を再認識し、揺らいだ信頼の回復に全力を尽くすべきである。