現在の日本では、梅毒がひとごとではない状態となっています。梅毒は梅毒トレポネーマという細菌による性感染症です。感染経路は、普通の性器の接触による性交、オーラルセックスなど性行為全般で、感染者との皮膚や粘膜の接触でうつります。感染力は強く、コンドームの使用でも完全に感染を防げるわけではありません。
さらに、日本でも報告数が増えている、生まれながらに赤ちゃんが感染している「先天性梅毒」も深刻です。妊婦が感染している場合には梅毒トレポネーマが母体と胎児をつなぐ胎盤を通って、母子感染(母から子への感染)を起こし、胎児に甚大な影響を与えます。
梅毒に感染した妊婦が未治療であった場合には胎児にも感染し、約4割が死産や流産となってしまいます。生まれても、低体重、骨の異常、難聴、視覚障害や知的障害といった梅毒感染による障害が赤ちゃんに現れます。障害の内容や程度は感染の期間によって異なります。
梅毒にはペニシリンという特効薬があります。ポイントは医師の処方を守ってきちんと服用することです。また、2021年には「ベンジルペニシリンベンザチン」というペニシリン系の抗菌薬の筋肉注射が日本でも承認されています。早期梅毒であれば1回の注射で完治でき、より病期の進んだ3期の梅毒でも1週間間隔で3回の注射で治療効果が見込まれます。
検査は、自治体によってはHIV検査とともに匿名・無料で行っているところもあります。医療機関では皮膚科、感染症科、泌尿器科、産婦人科などで診てもらうことが勧められます。心配な性行為から6週間経過していれば感染の有無がわかります。
妊婦健診(4週~12週ごろ)では梅毒検査は必ず行われますが、健診をきちんと受けない人もいます。大事なことは、妊娠前に風しんの抗体検査をするのと同様に梅毒の検査もし、きちんと対応(風しんはワクチン接種、梅毒は治療で完治)をしてから、妊娠することです。梅毒の検査と治療は大切ですね。
おかだ・はるえ 医学博士。専門は感染免疫学、公衆衛生学。テレビやラジオへの出演や執筆活動を通じて、感染症対策の情報を発信している。

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