東京五輪柔道男子60キロ級金メダリストで下野市出身の高藤直寿(たかとうなおひさ)(32)=パーク24=が現役引退を発表した。2013年の世界選手権初優勝から10年以上、世界をけん引してきたスターだ。一時代の終わりに、幼少期から県内で柔の道を歩んだ記者自身も寂しさが湧き上がった。

昨年8月の全日本実業個人選手権2回戦で、得意の小内刈りを仕掛ける高藤=兵庫県尼崎市のベイコム総合体育館、加藤竜矢撮影
昨年8月の全日本実業個人選手権2回戦で、得意の小内刈りを仕掛ける高藤=兵庫県尼崎市のベイコム総合体育館、加藤竜矢撮影

 基本があっての豪快さだった。高藤と言えば「高藤スペシャル」と呼ばれる腰技や変則的な肩車に代表されるように、誰もまねできない独特なスタイルで地位を築いた。だが高藤自身は得意技をシンプルな「小内刈り」と、曲げることなく答え続けた。

 その理由を「柔道において小内刈りは基礎であり自分のバロメーター。これをおろそかにして勝ちはない」と語ってくれた。パリ五輪代表落ちから1年9カ月ぶりの復帰戦となった昨年8月の全日本実業個人選手権でも、試合前から入念な打ち込みを行い、切れ味抜群の十八番を披露。誰でもできる足技を誰よりも極めるその求道心が、世界のトップたるゆえんと改めて思い知った。

東京五輪柔道男子60キロ級準決勝で相手選手を攻める高藤直寿。金メダルを獲得した=2021年7月24日、日本武道館、鈴木久崇撮影
東京五輪柔道男子60キロ級準決勝で相手選手を攻める高藤直寿。金メダルを獲得した=2021年7月24日、日本武道館、鈴木久崇撮影

 忘れられない出来事がある。