在宅医療でのがん早期発見・治療モニタリング応用へ道

2025年11月20日

がんマーカーを迅速検出する小型センサを開発

― 在宅医療でのがん早期発見・治療モニタリング応用へ道 ―

 

 Heat Shock Protein 90 (HSP90)は細胞内で他の蛋白質の折り畳みを助ける分子シャペロンと呼ばれる蛋白質の一種です。正常細胞にも存在しますが、がん細胞ではその働きが活発化し、がん患者では血液中のHSP90濃度が高くなることが報告されています。そのため、特定のがんに限らず、幅広いがんの早期発見や治療モニタリングに役立つ汎用的ながんマーカーとして注目されています。従来、がんマーカー測定には大型の分析機器や煩雑な操作が必要でした。

 このたび地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター(都産技研)は、HSP90だけを「鍵と鍵穴」の関係のようにキャッチする分子(ペプチド)を、光で物質の付着を検知する特殊なセンサ(LSPRセンサ)の表面に固定化することでHSP90検出センサを開発しました。この工夫により、わずか8mm四方の小型センサチップを用いてHSP90の検出が可能となり、従来の手法と比較して簡便な測定が実現しました。本成果は、在宅医療でのがん早期発見や治療モニタリングへの応用が期待されます。

 

開発のポイント(技術の詳細は次ページに記載されています)

小型・簡便

8mm四方と小型で、従来のような煩雑な操作や大型機器を必要とせず、迅速に測定が可能

高感度

検出限界は0.75 μg/mLであり、がん患者の血中濃度域(最大数百μg/mL)に対応できる水準

将来性

手のひらサイズのデバイス化が見込まれ、在宅医療でのがん早期発見や治療モニタリング等への応用に期待

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202511189327-O1-RezNqce5
論文誌名:Plasmonics

掲載日:2025年11月13日

論文タイトル:Peptide-Functionalized Localized Surface Plasmon Resonance (LSPR) Sensor for Label-Free Detection of HSP90

著者:望月和人*、瀧本悠貴、中川朋恵、月精智子 *責任著者

DOI:https://doi.org/10.1007/s11468-025-03301-z

 

都産技研では本技術の社会実装を促進するため、製品化を目指す企業との

共同研究を推進しています。ご興味のある方は下記までお問合せください。