栃木労働局が長時間労働の疑われる県内350事業所を対象に実施した監督指導の結果、2024年度は127事業所で違法な時間外労働を確認した。
このうち59・8%で過労死ラインとされる月80時間超の時間外・休日労働があった。前年度の63・9%を下回ったことは評価できるが、それでも全国平均48・7%を大きく超えている。労働局は「前年度から減少しているが、時間外労働が減ったと一概に評価できない」としている。
過労死ラインを超える残業が確認された事業所のうち、月100時間超の事業所の割合は31・5%、150時間超が6・3%だった。いずれも前年度を下回ったものの、両方とも全国平均は上回っているのは看過できない。労働者の健康を守るため、経営者は過重労働・過労死の防止対策をさらに徹底させるべきだ。
本県は納期前の残業が増えやすい製造業が多いことが、違法残業の多い理由として考えられる。人手不足も背景にあろうが全国的な問題であり、本県で過労死レベルの事業所が多いことの免罪符にはならない。経営者は肝に銘じてほしい。
特に運輸・交通業は、従来の働き方が通用しなくなっている。猶予されてきた時間外労働の上限規制が24年4月から適用され、最大で年間960時間となったためだ。
違法残業の多い業種の常連だった汚名を返上する、良い機会である。現に県の統計でも、運輸業と郵便業の月平均労働時間は前年度に比べて減少傾向が見られる。業界として労働時間を短縮しようとしている動きについては歓迎し、今後の推移を見守りたい。
問題は宅配需要の増加に伴う再配達率の高さだろう。非効率な運行を是正するため、指定時間に荷物を受け取るなど、利用者の協力も欠かせなくなっている。宅配ボックスや置き配の普及についても盗難防止には最大の注意を払いながら、利用者の利便性とドライバーの負担軽減を両立させるために進めたい。
労働環境の改善につながるデジタル技術の導入も、積極的に取り入れたい。全ての業種に言えることである。
今月は厚生労働省が定める「過重労働解消キャンペーン」期間でもある。過労死ゼロと過労死につながる違法残業を減らすために、官民を挙げて取り組んでほしい。
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