取材に応じる橋口亜希子さん

 厚生労働省が公表している主な相談窓口

 取材に応じる橋口亜希子さん  厚生労働省が公表している主な相談窓口

 保護者が子どもを道連れにして自殺を図る無理心中。国は児童虐待と位置付け、2004年からの約20年で計652人が犠牲になった。原因は育児不安や経済的困窮など。かつてわが子に手をかけようとした橋口亜希子さんは「居場所を失い孤立していた。社会が追い詰めている部分もあると気付いてほしい」と訴える。

 抱っこじゃないと寝ない、離乳食を食べない。保育士から「ちゃんと叱ってください」といさめられた。偏食だったため「みそ汁作れる?」と嫌みも言われた。小学校の授業中に教室を飛び出すなどトラブルが続発。周囲からは「母親の能力がない」との言葉も。夫は協力的だったが、次第に追い込まれた。

 01年。当時6歳の息子と山に車で向かい、助手席に座った息子の首に手をかけ、一気に力を込める。息子の口から「ごめんね」。われに返り、手を離した。

 橋口さんはその後、小学校教員からADHDの冊子を渡された。「一緒に考えませんか」。救われた気がした。

 発達障害の啓発活動を続ける橋口さんは「誰もが支援を受けやすい仕組みづくりが重要」と訴えた。