「江戸返り」を象徴、仙禽の「鶴鳴」シリーズ 

 江戸時代の伝統的な酒造り技法重視の「江戸返り」で「仙禽(せんきん)」のリブランディングを図るせんきん(さくら市)で、高価格帯のプレミアム商品に位置付けている「鶴鳴(かくめい)」シリーズが好評だ。「江戸返り」を象徴する商品として定着しつつある。

 同社は昨年11月、等級の高い米を究極まで磨いて醸すという従来の高級酒造りの考えと一線を画し、「江戸返り」をブランド再構築の軸に据えた。

 その頂点を目指したのが「鶴鳴」シリーズだ。「鶴鳴」の出典は、詩経の「鶴鳴于九皐 声聞于天」。鶴は深い谷底で鳴いても、その鳴き声は天に届く。つまり賢人は身を隠しても、その名声は広く世間に知れ渡るという意味を込めた。

 今年3月、最初に発売されたのは「鶴鳴 仙禽一聲(いっせい)」。長年、同蔵の高級酒として愛されてきた「仙禽一聲」の系譜を引き継ぎながら江戸返り技法、特に段仕込みと超低温発酵の礎となった「寛文期」醸造技術の文献や思想をベースに酒質を設計した。生酛造りにより、より奥行きのある味わいだけでなく、緻密さと繊細さを兼ね備えた酒になったという。減農薬のさくら市産山田錦を使った。

 4月には江戸時代の中でも「元禄期」の造りに焦点を当てた「仙禽 鶴鳴 麗(うらら)」を発売した。多麹米と五段仕込みにより奥行きと深みのある複雑な味わいを再現し、また超濃密な酒質を獲得したという。さくら市産で有機栽培した古代米の亀の尾60%、減農薬栽培の山田錦40%を使い、亀の尾の潜在能力を余すことなく生かしたとしている。

 5月にはシリーズの頂点に据える「仙禽 鶴鳴 醸(かもす)」を貴醸酒で商品化した。貴醸酒は仕込み水の代わりに酒を使うが、その酒も熟成したヴィンテージの「醸」を用い、発酵の深みと奥行きを最大限に引き出した。さくら市産の有機栽培した亀の尾80%、減農薬の山田錦20%で醸した。酒販店の中には「古代から続く神話と、江戸の醸造美学、そして現代の職人技術。それらが一本の酒として融合した奇跡のような存在」と評する関係者もいる。

 3品ともアルコール度数は15%。精米歩合は非公開。いずれも生酛造り、無濾過原酒、火入れ。容量は720ミリリットル。化粧箱あり税込み価格は仙禽一聲が4500円、麗が6千円、醸が1万2千円。いずれも年2回、限定販売する。