富雄丸山古墳で出土した斜縁神獣鏡の破片(奈良市教育委員会提供)

 奈良市教育委員会は31日、国内最大の円墳・富雄丸山古墳(4世紀後半、直径約109メートル)から出土し、中国製とされる斜縁神獣鏡の破片を分析した結果、鏡面を磨いた跡に赤色顔料のベンガラ(酸化鉄)を確認したと明らかにした。ベンガラは粒子が細かく、鋳造後の粗磨きで研磨剤として使われたとみられる。

 弥生時代の伊都国の王墓とされる平原遺跡(福岡県糸島市)や、大王墓とされる桜井茶臼山古墳(奈良県桜井市)の出土鏡でも赤色顔料が用いられた可能性が報告されている。奈良市埋蔵文化財調査センターの村瀬陸学芸員は「鏡の製作技術に関わる新たな視点が得られた」と話した。

 鏡の破片は、2019年に墳頂部の埋葬施設周辺で出土。長さ約3センチで、仙人とみられる模様の一部などが残る。デジタルマイクロスコープの観察で、研磨時のすり跡や、鋳造時に生じる直径0・1ミリほどのくぼみに赤い物質を確認。蛍光エックス線分析でベンガラと判明した。