胸に開けた小さな穴から器具を入れる胸腔鏡手術の様子。モニター画面を見ながら行う(浜松医科大提供)

 国立がん研究センターや浜松医科大などの研究チームは30日、胸に開けた小さな穴から器具を入れて食道を切除する「胸腔鏡手術」が食道がんの新たな標準治療として推奨できるとする研究結果を発表した。胸を大きく切る従来の開胸手術と比べ、術後の生存期間に差がないことを長期の追跡調査で初めて確認した。

 週内に日本食道学会が診療ガイドラインを改定する。オンラインで記者会見した浜松医科大の竹内裕也教授は「傷痕が小さく、術後の痛みも少ない。患者にとって生活の質の向上につながる」と話した。

 食道がんの外科手術は、近年は負担の少ない胸腔鏡手術が急速に普及している。チームによると、長期的な治療成績を直接比較した報告は世界初で、成果は英学術誌に掲載された。

 研究には国内の31施設が参加。2015~22年に開胸と胸腔鏡それぞれの手術を受けた患者150人ずつ、計300人を追跡した。3年後の生存割合は開胸で70・9%に対し、胸腔鏡は82・0%と上回った。また胸腔鏡では再発が少なく、術後3カ月時点での呼吸機能低下の割合も抑えられていた。