「県民の台所」を担う宇都宮市中央卸売市場が1975年度の開設から50年の節目を迎えた。ピーク時の87年度の取扱量は野菜と果実の青果物が22万2千トン、鮮魚や冷凍魚の水産物も5万6千トンに上り、最盛期の卸売業者は4社、仲卸業者も計40社と活況を呈した。

 しかしその後は下降傾向となり、2024年度の取扱量は青果物7万7千トン、水産物も初めて5千トンを下回る4600トンとともに過去最低になった。人口減少やインターネット販売の普及が要因という。時代の変化に応じた持続可能な運営を念頭に、第三者を含めた本格協議の場を設け食の安定供給を目指したい。

 市中央卸売市場は1975年6月、全国43番目の中央卸売市場として開設した。北関東で唯一の中央卸売市場で、現在は青果物と水産物の卸売業者が各1社、仲卸業者22社などが営業している。

 市場を介さず生産者から直接買い付ける「市場外流通」の導入など、市場を取り巻く環境は年々厳しさを増す。市中央卸売市場の24年度の取扱金額も青果物278億1600万円、水産物69億7800万円とそれぞれピーク時から大きく減少し、業者から得る使用料も減っている。

 こうした中、市は民設民営の再整備を場内で進めており、一般消費者向けの食の専門店、スーパー、イベントの三つのゾーンを備える「にぎわいエリア」を来年3月にオープンする。年間5千万円の借地料を見込み、収益の向上を図る方針という。

 しかし将来的には、少子高齢化による人口や需要の減少、ライフスタイルの変化に伴う市場のあり方や規模の見直しが求められる。市中央卸売市場を含め全国65カ所の中央卸売市場の喫緊の課題だ。

 岡山市中央卸売市場は24年度、有識者や市場関係者でつくる「岡山市場未来会議」を立ち上げ、再整備に向け議論を始めた。今夏には競争力強化に向けた施設のコンパクト化など中長期的な将来構想をまとめた。

 宇都宮市も市場の今後のあり方などついて、26年度から検討を始める予定という。識者のほか一般市民も含めた検討委員会のような組織を新たに発足させ、経営基盤の強化や市場全体の業務効率化、市場のブランド化推進など50年先を見据えた経営戦略を早急に打ち出したい。