公開された「香淳皇后実録」(代表撮影)

 正装姿の昭和天皇、香淳皇后=1975年4月(宮内庁提供)

 公開された「香淳皇后実録」(代表撮影)  正装姿の昭和天皇、香淳皇后=1975年4月(宮内庁提供)

 宮内庁は9日、昭和天皇の后、香淳皇后の97年の生涯を記した「香淳皇后実録」を公開した。戦中、日本軍の将官クラスの出征・帰還に際して頻繁に面会し、軍病院に傷病者を慰問するなど「戦時下の皇后」を詳細に記述している。敗戦を境に、側近による進講の内容は「新憲法概説」などに一変し、戦後民主主義への適応を迫られる姿が浮かんだ。

 実録は計3828ページで、1903(明治36)年の誕生から2000(平成12)年の死去までを時系列に記載し、昭和史を考える上で貴重な史料となる。皇后の発言は限られ、心境を表す直接的な記述はなかった。全文は宮内庁ホームページで閲覧できる。

 実録によると、軍部との面会は1931年の満州事変ごろから増えだし、41年の太平洋戦争開戦後は年30回程度を数えた。

 出征する将官に「重任を帯びて出発する苦労を思う」と伝え、帰還の際は慰労する「お言葉」をかけた。側近の侍従武官を派遣し、戦地の将兵に「令旨」(お気持ちの文書)を出したケースもあった。お言葉と令旨は計242回確認された。