病院で勤務する薬剤師が不足している。県内医療機関を対象とした県のアンケートでも、多くの病院が「全く足りていない」などと回答している。

 国が2023年に公表した薬剤師の充足度を示す指標は、県内の薬局が基準の1を上回る1・04だったのに対し、病院は0・69だった。全国平均の0・80も下回り、都道府県別の順位は35位だった。

 薬局やドラッグストアとの給与格差や夜勤勤務などが、学生から敬遠されている理由という。この障壁を、財政支援と働き方改革で下げなければならない。思い切った若手の処遇改善が必要だ。

 病院薬剤師の不足がこのまま進むと、患者への服薬指導などの質が低下する懸念がある。医師や看護師との連携不足から治療成績の低下や、患者の受け入れ制限などによる医療経営面での悪化にもつながりかねない。

 病院薬剤師の給与は薬局に比べ、20~30代で低い傾向にある。6年制大学の薬学部では、奨学金を借りる学生も多いという。県と病院が共同で、返済支援を勤務年数に応じて制度化することも検討したい。医療過疎地域では上乗せも求められるだろう。

 働き方も見直したい。夜勤勤務をなくすことは困難だが、回数に上限を設定することはできないだろうか。在庫管理などの事務作業は薬剤助手や事務職員に任せたり、業務の一部外注化を進めたりすることで、業務の負担軽減を図ることも考えられる。

 人材供給源の大学との連携も欠かせない。県病院薬剤師会は先月、初の連携協定を横浜薬科大と締結した。本県出身学生の将来的なUターン就職につなげたい。県内で唯一薬学部を擁する国際医療福祉大との連携も強めるべきだろう。それによって大学や学生にどんなメリットがあるのか、示すことも求められる。

 病院薬剤師の魅力は、医師や看護師と共に働くことで高度な専門性が身につくこととされる。それが「やりがいの搾取」と、若者に受け取られるようではいけない。臨床での専門性やキャリア形成の魅力を「見える化」することが肝要である。

 奨学金の返済支援などは予算措置が必要となる。県、病院、大学、薬剤師会が一体となってロードマップを作成し、できることから実行に移してほしい。