被災者から学んできた震災時の状況や備えの大切さを語り部として解説する鈴木心彩さん(右)=27日午前、宮城県岩沼市

 東日本大震災の津波被災地を整備した宮城県岩沼市の「千年希望の丘」で27日、震災後生まれの市内の小学6年鈴木心彩さん(12)が語り部としてデビューした。「命は自分の中にひとつ。津波の怖さを伝え、皆を守りたい」との思いを胸に、被災者から学んできた震災時の状況や備えの大切さを解説した。

 鈴木さんは2回にわたって各1時間ほど、周辺の育林活動を行ったボランティアら計約70人を前に言葉を紡いだ。かつて六つの集落があったことや、地震発生後に避難先から家に戻って津波の被害に遭った人たちがいたことなどを説明した。埼玉県川越市から参加した中尾俊太郎さん(30)は「臨場感があった。災害は人ごとではないと思った」と話した。

 鈴木さんは夏休みの宿題がきっかけで、数年前から「いわぬま震災語り部の会」主催のイベントに参加してきた。何度も訪れ、真剣に学ぶ様子を見ていたメンバーに誘われ、8月に中3の兄と共に入会し、伝える側として活動を始めた。

 同会の渡辺良子会長(82)は「次の世代にバトンを渡したい」とほほ笑んだ。