2023年4月、岸田首相(当時)の演説会場で取り押さえられる木村隆二被告(中央下)=和歌山市の雑賀崎漁港

 和歌山市で2023年、岸田文雄前首相の演説会場に爆発物を投げ込んだとして、殺人未遂など五つの罪に問われた無職木村隆二被告(26)の控訴審判決で、大阪高裁(石川恭司裁判長)は25日、懲役10年とした一審和歌山地裁判決を支持し、殺意を否認した被告側の控訴を棄却した。

 今年2月の一審判決は、再現実験の結果などから爆発物に殺傷能力があったと認め、岸田氏らが死亡するかもしれないという未必的な殺意があったと判断。「現職総理大臣を狙い、社会全体に与えた不安感は大きい」と指摘していた。

 一審判決によると、被告は23年4月15日、和歌山市の雑賀崎漁港で、岸田氏らが死亡する可能性を認識しながら手製の爆発物を投げて爆発させ、近くにいた警察官と聴衆の計2人に軽傷を負わせた。岸田氏にけがはなかった。

 一審で被告は選挙制度に不満を持ち、有名な政治家がいるところで注目を浴び、自分の考えを知ってもらおうとしたと動機を説明。一審に続き控訴審でも「身体の加害目的はなかった」と改めて殺意を否認していた。