日本の「食料安全保障」に危機感を抱かせるデータだと言えよう。10年後の後継者が決まっていない農地が17都府県で5割を超えたとする調査結果を農林水産省が公表した。5割超は大阪や香川、沖縄など17都府県で西日本に多く、本県は40・9%と全国平均31・7%を上回った。
本県は2022年の農業生産額が全国9位の2718億円と上位の農業県であり、対策は喫緊の課題である。年々減少する農業従事者をどのように確保するのか。生産性の向上に農地の集約・大規模化やスマート農業も欠かせない。生産者や行政、農業団体に限らず、消費者も食料安保への意識を高めたい。
農林水産省の20年農業センサスによると、本県の基幹的農業従事者は4万2914人で5年前の前回調査より1万人減少し、65歳以上の割合も69・5%と高齢化も一段と加速した。一方、県がまとめた20年までの5年間の新規就農者は1643人にとどまっている。
まずは多様な人材確保策だろう。県は22年10月、農業に関心のある人を呼び込むための就農支援サイト「tochino(トチノ)」を開設した。本県の就農環境や農地・空き家情報、農業と他の仕事を組み合わせる「半農半X(エックス)」に関する相談窓口を設け対応している。
トチノの相談予約件数は初年度の20件から24年度は156件に増加。これらを含む県全体の就農相談件数も20年度の576件から24年度は805件と年々増えている。希望者を着実に就農へ結び付けるツールとして、トチノのコンテンツや各行政の相談窓口体制をより充実させたい。
農地の集約・大規模化は効率的な経営を可能とし、所得向上にもつながる。農地の貸し手と借り手をつなぐ県農地中間管理機構(農地バンク)は、持続可能な農地の実現と新規就農者らへの農地集約を進める。本年度から農地の貸し借りは農地バンクに一本化された。組織体制を強化し農地集約に取り組んでほしい。
昨年6月に施行された改正食料・農業・農村基本法は、食料安全保障を新たに基本理念に位置付けた。日本のカロリーベースの食料自給率は38%(23年度)で先進国の中で最も低い。地産地消の一層の推進など、消費する側も「農と食」のあり方にしっかりと向き合うべきだろう。