交流サイト(SNS)や電子決済サービスに関連した詐欺的な手口による被害に関した苦情相談が、県内で急増している。年代別では60代以上の高齢者層で増えている。
デジタル機器に不慣れな人々が、トラブルに巻き込まれているのがうかがえる。社会経験が未熟な若者も例外ではない。
消費者トラブルを未然に防ごうと、県は2026~30年度を計画年度とする第3期消費者基本計画の素案をまとめた。消費者教育の拡充を特徴としているが、まずはデジタル対策を急ぐべきだ。
県によると、24年度に県内の消費生活センターに寄せられた苦情相談のうち、SNSに関するものが前年の1・2倍に当たる1548件だった。「購入した商品が定期購入だった」「副業を勧誘され、高額なサポート費用を払わされた」などが多い。
電子決済に関する被害相談は89件で、前年の2・7倍に増えた。「スマートフォンで返金手続きを誘導されているうち、いつの間にか再度送金してしまった」などの事例が急増したという。
こうしたトラブルに対処するため、第3期計画の素案では「消費者力の向上」を掲げた。ライフステージに応じた消費者教育を推進するとしているが、子どもから高齢者までが分かりやすい教材や講座を求めたい。詐欺メールや偽サイトの見分け方など、実践的な訓練も必要だろう。
「被害の未然防止と解決に向けた取り組み強化」も掲げた。個人のデジタル端末が購入した時の初期状態のままになっていないか、技術的な予防策を講じる手段を周知したい。こうした設定が苦手な消費者に対しては、身近な自治体などが手助けする仕組みを設けてほしい。
「消費生活における安全・安心」の確保は最も重要である。消費生活センターや警察などの相談窓口の連携強化を、より一層進めたい。県域を越えて広域的に活動する悪質な事業者に対処するため、政府の役割強化も求められる。
今年に入ってからネット証券各社で口座が乗っ取られる被害が相次いだのは、記憶に新しい。金融や通信事業者、通信販売の電子商取引などには強固な本人認証や多要素認証の導入を義務付ける必要がある。政府は、こうした事業者に対する規制強化も検討するべきだろう。