避難所のトイレの数に関し、政府が指針で示す基準を満たしていない県内の自治体は16市町に上る。避難者1人当たりの居住面積も13市町が基準を満たしていなかった。
共同通信のアンケートによると、基準を満たせない理由として財政上の課題を挙げる市町が多く、市町レベルでは対応が困難な側面があることが浮き彫りになった。
本県は2015年の関東・東北豪雨、19年の台風19号などで被害に見舞われており、大規模災害のリスクは少なくない。避難せざるを得ない住民がストレスなどを抱えないよう、市町には基準を満たす努力を求めたい。国は、財政的に厳しい自治体を支援するなど、避難所環境の整備を後押しすべきだ。
昨年1月の能登半島地震では、避難所の仮設トイレ不足などの課題が表面化した。それを受け政府は昨年12月、自治体向けの避難所運営指針を見直した。被災者の権利保護をうたう国際基準を新たに採り入れ、トイレの数を災害発生初期段階で50人につき1基、占有スペースを1人当たり最低3・5平方メートルとすることなどを求めている。
アンケートでは日光市を除く24市町のうち、トイレの数は宇都宮、大田原、益子など8市町が満たしていると回答した。居住面積については、宇都宮、足利、野木などが満たしているとした。
基準に達していない市町は、財政的な課題のほか人的問題、平時の活用方法などの難しさを指摘した。求められる対策がさらに高度化することで、対応が追い付かない面もあるようだ。
災害が多発・激甚化する中で、防災への要求レベルも高くなっている。財政面にとどまらず、国や県の支援が求められる。
一方、県内25市町が定める指定避難所と指定緊急避難場所のうち、約3割が洪水浸水想定区域か土砂災害警戒区域にあることが、下野新聞社の調査で分かった。大きな川が流れているため洪水想定区域が広範にわたることなどから、区域内に避難所を指定せざるを得ない事情もある。
こうした市町は、避難所となる学校などの上層階への避難を念頭に置く「垂直避難」を呼びかけるなど運用で工夫を凝らしている。各市町の運用や避難時の心がけを積極的に周知することで、住民に安心感を与えてほしい。