2024年度の県内献血可能年齢(16~69歳)者のうち、献血した人の割合(献血率)は7・7%となり、北海道と並び初めて全国1位になった。10代の献血率は08年度から全国トップを維持している。病気や不慮の事故で輸血が必要となる事態は万人に通じるリスクである一方、人口減少で献血者になり得る母数は減り続けており、献血量は先細りしかねない。10代の献血率の高さを起爆剤に全世代へより一層の浸透を図りたい。

 県赤十字血液センターによると、24年度の県内献血者数は400ミリリットルが5万9358人、200ミリリットル6453人、成分献血2万9472人の計9万5283人が協力した。

 特徴は10代の献血率の高さである。同センターは1962年の業務開始とほぼ同時に、移動採血車を県内高校へ派遣する学内献血を始めた。2022年度の全国の学内献血率を見ると本県は87%と最も高い。だが50%を超えているのは本県を含めわずか5県で、一桁台が18都府県もある。

 全国一斉に始まったとされる学内献血に大きな差があるのは、各都道府県センターの取り組み方の違いによる。

 輸血は一種の臓器移植とも言われ、一人の患者に対する献血者の数が少ないほど発熱などの副作用のリスクを抑えられる。このため医療機関からは200ミリリットル献血よりも、一人からより多く採血できる400ミリリットル献血が求められる。だが提供するには男性17歳以上、女性18歳以上の年齢制限があるため学内献血では確保しづらく、多くの他県で下火になったとみられる。

 本県センターは献血の全体量確保や啓発を目的に、60年以上にわたり学内献血を続けている。こうした10代での経験が献血を身近にし、50代までの各年代の献血率が全国5位以内(24年度)という好結果に結び付いたといえる。

 一方、県内の全献血者を年代別でみると、最多は50代の29%、10代は8・5%と最少だ。少子高齢化が進む人口構成上、やむを得ないが、現在の50歳は20年後には献血ができない年齢に達する。今はまだ献血できない将来の若年層も含めた啓発は欠かせない。

 大規模災害時に献血は急増するといわれる。助け合いの精神がより求められるからだろう。献血について考えることは、命に向き合うことにつながる。有事だけでなく日頃から意識することが重要だ。