新著「宇都宮の近現代」を出版した大嶽さん

 【宇都宮】県文化功労者の歴史研究家大嶽浩良(おおたけひろよし)さん(80)=今宮3丁目=はこのほど、明治維新以降の宇都宮の歴史をたどった新著「宇都宮の近現代」を下野新聞社から出版した。戊辰戦争や宇都宮空襲による戦禍と復興、中心街のデパートの盛衰、次世代型路面電車(LRT)開通など幅広い領域の160年近い歩みを紹介した。長年講師を務める市民向け講座の受講生の声を反映させたといい、大嶽さんは「市民との『対話』から生まれた一冊」と話している。

 大嶽さんは高校教諭の傍ら1994年に市文化財保護審議委員会委員となり、市教委が発行した戦災記録保存事業報告書「うつのみやの空襲」(2001年)の編集責任者も務めた。県内の戊辰戦争や明治維新を扱った著書もある。

 新著は、04年度から講師を務める市民向け講座「宇都宮市民大学」で発表してきた内容をまとめた。受講生から寄せられた感想や意見を参考として、内容の練り直しを重ねた。

 宇都宮城が焼亡した戊辰戦争や陸軍第14師団の誘致など主に明治期を扱った「近代の宇都宮」から始まる3部構成。宇都宮空襲前後の軍需工場進出や復興に関する「戦時下の宇都宮と都市の再建」、大谷石生産の盛衰や宇都宮環状道路(宮環)完成といった「戦後の発展-工業都市化への脱皮」と現代まで続く。

 明治初期の宇都宮県時代に開設された公立病院「共義(きょうぎ)病院」と直下の医学塾の存在、宇都宮中学(現宇都宮高)の第8代校長笹川臨風(ささがわりんぷう)と田中正造(たなかしょうぞう)の知られざる関係など新史料から解明した事実も盛り込んだ。

 表紙カバー裏側には宇都宮空襲の被害状況図を掲載するなど地図や写真も多用した。大嶽さんは「苦難と意欲的な街づくりに満ちた宇都宮の歴史。多くの市民の人生に接点があるはず」と語った。

 A5判。348ページ。2750円。県内の書店などで販売している。(問)下野新聞社教育文化事業部028・625・1135。