益子陶器市が20、21両日、東京都心・恵比寿ガーデンプレイスで初めて開かれる。恵比寿・代官山エリアなどは、ライフスタイルへの意識が高い人が多いとされる。里山に育まれた焼き物や陶器市の魅力を訴え、益子の価値を見いだしてもらうブランディングの新たな基軸としたい。

 益子町内の陶器市は毎年春と秋に開かれ、計約60万人が訪れる県内最大の陶器イベントだ。

 恵比寿での陶器市は益子焼関係団体振興協議会が主催し、作家などの計約70個人・団体がテントを連ねる。作家が出向く県外の大がかりな陶器市は初めて。「客が作家とコミュニケーションを楽しめる」という益子陶器市の持ち味をそのまま会場に持ち込むことが特徴である。

 陶器市と、衣食住などへのこだわりがある人が近くに暮らすエリアとの親和性は高い。焼き物の味わいや陶器市の空気を伝えられれば、波及効果は大きいだろう。

 一方、益子焼統計調査などによると、約30年前に約100億円だった総販売額は大きく減っている。消費者が陶器市で日用品としてまとめ買いするのではなく、お目当ての作品を一点買いするような時代になった。趣味や嗜好(しこう)の変化にはあらがえない。

 益子や周辺で創作されていれば益子焼と呼ぶが、そのありようも変化している。素朴でぽってりと厚く「柿釉(ゆう)」などの渋みのある陶器のイメージが強い。半面、約400人いる作家のうち、「自由でのびのびとしている」と言われる風土に移り住んだ若手らのスマートな作品、花や動物を描いた作品なども目を引くようになっている。伝統の釉薬(ゆうやく)を使って新たな表現を模索する作家もいるという。

 焼き物産地の活力向上を図るため、新たな息吹も力とすることが重要だ。恵比寿での陶器市は、伝統的な窯元と気鋭の作家が出店し融合する形となる。改めて益子焼のブランディングを考える試金石と位置づけてはどうか。さらに継続することで、ブランドに磨きをかけてほしい。

 益子には布や木工といった手仕事が根づき、町や関係団体はカフェなどスモールビジネスへの挑戦のしやすさも訴える。里山の自然やそこで営まれるコメやイチゴの農業なども魅力。焼き物を核とした取り組みで、移住促進や地域活性化の相乗効果を望みたい。