本県で初めて大雨特別警報が発表され、死者3人を含む死傷者計8人、住家被害も計約6千棟強に及んだ2015年9月10日の関東・東北豪雨の発生から10年を迎えた。19年の台風19号による大規模な被災をはじめ、昨年8月下旬には線状降水帯が県北部で発生し住家や農産物に多大な被害が出るなど、本県は全国上位の水害被害県である。
大地震から復興途上にあった石川県能登地方が、記録的豪雨で再び甚大な被害に遭ったことは記憶に新しい。この「複合災害」も念頭に、孤立集落対応や地区防災計画作りなどで県や市町には対策の強化が求められる。県民も防災意識の向上に一層努めたい。
国土交通省の最新の水害統計によると、23年までの10年間にわたる本県の水害被害額は計約3300億円に上り、全国で7番目に多い。この総被害額のうち最多は台風19号で被災した19年の約2600億円で、関東・東北豪雨に遭った15年の約650億円が続いた。4、5年に1回の頻度で被害額が数百億円を超える水害が本県で生じていることを改めて肝に銘じよう。
15年の関東・東北豪雨の際、日光市芹沢地区で道路が崩落し14世帯25人が一時取り残された。24年元日に起きた能登半島地震では一時、3千人超の住民が孤立した。本県によると、国の指針に基づいた孤立する可能性のある県内の集落(区域)は、24年度末で15市町の544カ所に上る。
能登半島地震では、被災地支援で初めてドローンが本格運用され、取り残された住民の有無や道路、橋の損傷状況の確認、医薬品など支援物資の運搬で力を発揮した。本県でも災害現場で活用できるよう備えを進めるべきだ。
一方、本県の自治会やマンション単位の住民が防災計画を作り、災害発生時の被害軽減や迅速な復旧に役立てる「地区防災計画」策定は道半ばだろう。24年度末で186地区にとどまり、県が25年度中の目標とする280地区に及ばない。市町と連携し地域防災力の向上に努めるべきだ。
24年度の県政世論調査では、災害の備えとして食料や飲料水の備蓄、家具転倒防止対策、非常用持ち出し袋の準備は前年度を上回った。一方、「特に何もしていない」が16・4%と前年度より約5ポイント増えた。自然災害が重なることも想定し、自分の命は自分で守る意識の徹底を図りたい。