2005年に下野新聞紙面で連載した「戦後60年 とちぎ産業史」。第2次世界大戦後、栃木県内の産業や企業はどんな盛衰のドラマを繰り広げたのか-。今年は戦後80年。関係者の証言などを収めた20年前の記事を通して、あらためて戦後の歩みを振り返ります(9月7日まで毎日配信予定)。記事一覧はこちら

【戦後60年 とちぎ産業史】百貨店(下)

 新天地での挑戦-。それは自ら退路を断った背水の陣でもあった。

 一九九四年十月十三日。宇都宮市今泉町に県内最大となる複合型ショッピングセンター(SC)が華々しくオープンした。

 「福田屋ショッピングプラザ宇都宮店」

 同所は市中心部から車で十分ほどの「準郊外」に位置する。百貨店業務を始めて以来、三十二年間にわたって中心部を本拠地としてきた「福田屋百貨店」が初めて手掛けた郊外SC型百貨店だった。

 新店舗の開店に先立ち、中心部にあった旧店舗は閉店していた。

 「新店が失敗しても後戻りはできなかった。トップをはじめ全員が相当の覚悟をもって新天地に臨んだ」。増田仲夫副社長(62)は振り返る。