日本ではまだなじみの薄いフランスの現代作曲家ダマーズの作品演奏をライフワークとするピアニスト山田磨依が新作アルバムを発売した。収録したのは多くが世界初録音となる練習曲全曲で、日常をふっと忘れられる幸福感に満ちた曲ばかり。「普段クラシック音楽を聴かない人も楽しめるはず。ピアノを弾く人が練習すればしっかり力にもなります」と語る。
フルートやハープの曲を多く残したダマーズ。山田も幼い頃、アマチュアフルート奏者の父が吹くダマーズの曲を繰り返し耳にしていた。音楽大学に進学後にピアノ曲の存在を知り、きらめくような曲調と美しいメロディーに魅了された。
パリに留学中の2013年、会うことのかなわぬまま死去したダマーズの葬儀に出席した。参列者は少なく、追悼演奏もない。こぢんまりとした葬儀だった。「フランスでは難解な現代音楽が主流で、ダマーズの曲はそれほど弾かれなかった。私がダマーズの音楽を極めて、広めたいと思った」
山田によるダマーズのピアノ作品集2作目となる今作。難易度が高く華やかな「8つのエチュード」やピアノ中級者の練習にもおすすめの「公式と問題」「ささいな苦行」などを収めた。変拍子や転調、指のテクニックが巧みに織り込まれ、中には強弱の指示がない曲もあったが、「ダマーズの思いを想像しながら、今後誰かが弾くときに参考になるように演奏することを心がけた」そうだ。
CD発売に合わせ音源を配信すると、早速海外から「仕事中に聴いています」などと反応が届いた。日本の演奏会で取り上げられる機会も増えているそうで「じわじわダマーズファンは広がっています」と手応えを感じている。
「心が和み、時にノスタルジーを感じるようなさわやかな音楽。気軽に聴いてもらえたらうれしい。2028年のダマーズ生誕100周年に向けてさらに盛り上げたいです」
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「クレッシェンド!」は、若手実力派ピアニストが次々と登場して活気づく日本のクラシック音楽界を中心に、ピアノの魅力を伝える共同通信の特集企画です。